私達人間は農業をすることで、食べ物を安定して手に入れることが出来る様になり、
不安定な狩猟生活に別れを告げて、安定して食べ物を得ることが出来る様になりました、
しかし実は農業を初めて行ったのは私達人間ではありません。
農業の開祖は私達よりももっと原始的な生物であるアリなのです。
キノコを栽培するハキリアリ
ハキリアリは南アメリカに生息しているアリで、彼らのメインの餌は自身の農園で栽培したキノコです、
彼らは周囲の植物から葉っぱを切り取って集め、細かく砕いたものを肥料にし、
キノコの農園を作りあげます、巣の規模は大きいものは50リットルものサイズにもなり、
その中には実に300万匹以上のアリが住み、一日で大型のウシ一頭以上の葉っぱを消費します。
南アメリカで最も植物の消費が多いのはハキリアリとも呼ばれるほどで、
安定した食料供給によって、彼らは人間同様にその勢力をどんどん広げ、
今では南アメリカで最も栄えている昆虫といっても過言ではありません、
ですがハキリアリがキノコ農園を始めるまでの苦労は並大抵のものではありません、
今回はそんなハキリアリ達の農園を起動に乗るまでの苦難の道をご紹介します。
年に一度の合コンパーティー
新しい巣はまず既存の巣から生まれた若き女王アリが生まれることから始まります、
普段女王アリは生殖能力を持たない働きアリだけを生みますが、
年に一度だけ生殖能力を持ったオスとメスを生みます、
そして結婚飛行と呼ばれるハキリアリのオスとメスだけが飛びかう儀式を行います。
この結婚旅行は開催される時期が決まっており、別の巣の女王アリ達もこの時期を合わせて、
若き女王アリ候補とオスを生み育成しています、この結婚飛行とはその地域一帯に住む数多のハキリアリ達が、
一同に集うハキリアリ界最大の合コンパーティなのです。
まるで人間のお見合いパーティの様ですが、人間とは異なる点が沢山あります。
アリの社会はメス絶対優位
一つはアリの結婚は一夫一妻ではなく、多夫一妻であることです、
若き女王アリは巣を作り始めると、他のオスと出会うことは出来なくなります、
なので女王アリはここで一生分の精子を体内に溜め込まなければなりません、
女王アリの寿命を10年以上でその間に生む卵の数は2億個以上と言われていますが、
オス一匹の精子では全然足りません、複数のオスの精子を貰ってようやく事足りるのです、
また複数の遺伝子で多様性を持たせたほうが全滅しにくい、という点でも利にかなっています。
交尾と共に人生を終えるオス
もう一つはオスは交尾を終えると死んでしまうということです、
オスの役目は女王アリに精子を渡すことだけで、一生を終えてしまいます。
いわゆる腹上死というやつで、オスの人生はメスに比べて非常に短いです、
巣の働きアリ達は全てメスであることを考えると、オスの役割がいかに少ないかがわかります。
残されたメスの苦難
しかし残されたメスの仕事は簡単な物ではありません、
最初の働きアリ達が生まれるまで、巣作りから生まれた卵の世話、キノコ農園の世話などを、
全て一人で行わなければなりません、特に新しい巣作りをするのが難しく、
巣作りの場所を探している最中に他の巣の軍隊アリに攻撃されたり、
自分よりも身体の大きい動物に食べられたりなど、災難続きです。
巣作りの段階で実に90%近くの若き女王アリが命を落とします、
さらにその後も農園の世話や、子どもの世話などで失敗する女王アリもおり、
巣を作った後、キノコ栽培まで安定させることが出来る女王アリは全体のわずか2.5%!
安定した農園を築けるのは、本当に極一握りの幸運な女王アリだけなのです。
次の記事では、残されたメスの苦難の道をご紹介します。
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撮影者:CharlesLam